30坪前後の間取りを希望される方が増えています。
以前は、建売では30坪前後が多かったですが
注文住宅でも30坪前後の間取りが増えました。
■建築費が高くなって坪数を減らさなきゃいけない。
■断熱性能を強化するために広さより性能を重視する。
こんなことが理由にあるようです。
夫婦と子供一人か二人、の3人家族4人家族の場合
30坪100㎡前後、でも不足はないように思います。
でも、家族人数が少ないからといって
キッチン、お風呂、洗面、トイレは、
5人家族、6人家族と同じようにあります。
30坪前後の間取りを設計していると
小さいからこその難しさ、
小さいからこその失敗する点
というものがあることに気づきました。
今回はその
30坪前後の間取りにありがちな失敗ポイントと
そうならないためのコツ
をご紹介します。
この記事を書いている私は
地域密着工務店で設計職を勤めた後、2013年に独立した一級建築士です。
今まで7,8社の工務店さんの注文住宅の設計を請け負ってきました。
毎週末、平均2,3組のお施主様と家づくりの打ち合わせをしています。
いろいろな工務店さんと家づくりをしているからこそわかること、
これから家づくりをされる方が失敗しないような情報をお伝えしていきます。
目次
30坪は広い面積ではありませんが
それでも要望はいろいろありますよね。
LDKは20帖くらい欲しい
シューズクロークが欲しい
洗面脱衣室に収納が欲しい
寝室にウォークインクローゼットが欲しい
在宅ワークできるデスクが欲しい
家事動線はコンパクトにしたい
こういった要望を叶えた間取りだとしても
実は失敗がある
という間取りも少なくありません。
30坪といいつつも、
キッチン、浴室、トイレ、洗面は40坪50坪と同じようにあります。
ドアや窓も同じようにあります。
小さいところにいろんなことがひしめいてきます。
干渉するところが多くなります。
本当は慎重に検討しなければいけないことを
見落としてしまうことがあるからです。
もう少し広ければこうはならない
ということが起こります。
40坪や50坪ではおこりにくい失敗が30坪だからこそおきてしまう
ということがあります。
20帖のLDKやシューズクロークやウォークインクローゼット
など
一見広くて収納がたくさんありそうに感じますよね。
ところが
ただ「通路」の部分が増えただけで実際の収納場所は少ない
ということもあります。
キッチン周りの物や洋服など
どこにどれくらいしまうか
分かりやすい物の収納は比較的確保しやすいです。
忘れがちなのがリビング周り
人が集まりいろいろなことをするリビングは
雑多なもので散乱しがちです。
何気なく置いてしまう物が出しっぱなし
ということがありませんか?
収納の基本は
使うところのそばにしまうところ
です。
しまうためにわざわざ隣の部屋にいかなければなならないと
面倒でしまわなくなります。
リビングに出しっぱなしの物
リビング周りに置いてある物
その行き場を間取り計画で考えておきましょう。
小型の季節家電、ついついポチってしまう便利グッズ
ITガジェット、100均でつい買っちゃう物、などなど
増えていく物は洋服や台所用品や必需品だけではありません。
キッチンまわり、クローゼット、玄関収納はあるけれど
それ以外に収納がない
という間取りをよく見ます。
それでは収納は足りないです。
新築計画中の方は今は賃貸に住んでいる方が多いと思います。
今は収納が少ないので物も少ないはずです。
でも、新しい家に住んだら、家族が増えたら
確実に物は増えます。
今持ってる物が入るから大丈夫、では危険ですよ。
置き家具は置かないつもりです
という方も多いですが。
この先生活スタイルがどう変わるかわかりません。
時代とともに持つ物が変わることもあります。
置き家具を使わなければいけなくなることも十分にあります。
延床面積が少ないと各部屋の面積が小さくなり、
そこにドアや窓がくるので
壁が少なくなります。
壁が少ないと家具の配置に困ります。
窓の前、ドアの前、に置くはめになることも。
家具だけではありません。
除湿器、加湿器、空気清浄機といった季節家電もあります。
ある程度は、間取りに余力を残しておいて
こういう場合はここが使える、という想定ができるほうが
暮らし方に余裕ができます。
全体の面積が少ないのに
シューズクロークやウォークインクローゼットやランドリールームなど
部屋数を多くしていくと
当たり前ですがどこかにしわよせがきます。
特に、玄関、ホール、トイレ、が狭くなることが多いですね。
玄関、ホールは、靴を脱いで通り過ぎるだけの場所なので
必要な広さはそれほどありません。
ですが、帰ってきた時最初に全員が入る場所、人を迎え入れる場所ですから
心理的な影響がとても大きい場所です。
面積は狭くても、
窓を効果的に配置して抜け感をつくる
インテリアを工夫して上質感をつくる
など、工夫は必要です。
狭いだけの玄関ホールは建売住宅のようになってしまいます。
トイレを階段下にして天井を低くすることも多いですね。
ただ、これもやりすぎは厳禁です。
営業さんは安易に階段下をトイレにする傾向がありますが
頭がぶつかりそうなものも見かけます。
まったく気にしない、ならいいですが。
できあがった家を見たら天井がめちゃくちゃ低くてびっくり
とならないようにしましょう。
最近では、主寝室を6畳にする方もいますが。
本当にそれでいいでしょうか?
寝るだけだからベッドが入ればいい
と言いますが。
毎日ビジネスホテルみたいな空間で寝るのは心地いいでしょうか?
まったく気にならない、ならいいですが。
6帖にベッドがどーんと置いてある空間をしっかりイメージして決めましょうね。
一つ一つの部屋が狭くても、
ドアや窓はあります。
そうなると、壁が少なくなります。
スイッチをちょうどいい位置につける壁がない
ということが起こります。
特に、引戸を多用するとなおさらです。
部屋の外につけなければいけない
1歩進んでからスイッチを押す
ということが起こります。
慣れれば大丈夫なこともありますが。
できれば使いやすくしたいですよね。
特に、子供室や寝室に起こりやすいのですが。
クローゼットのドアを開けたら
エアコンとぶつかる
カーテンレールとぶつかる
ということがあります。
クローゼットドアは背の高いものを使うことが多いです。
通常の出入口のドアは2mですが
クローゼットドアは2.3mです。
エアコンとカーテンレールにぶつかる高さです。
エアコンの取付位置がない
窓を大きくしたかったけど大きくできない
ということも。
4.5帖の子供部屋、6帖の寝室、要注意です。
これが一番大きな問題ですが、一番見分けにくいです。
木造2階建ては1階2階の柱の位置がそろっているほうが強度的に有利です。
2階にかかる力は1階の柱に伝わって基礎まで伝達されるからです。
1階と2階の壁の通りがそろっているほうが
力の伝わりがスムーズです。
30坪でLDKを20帖くらい、2階は3部屋、となると。
どうしても、1階の壁が少なく、2階の壁が多くなります。
1階2階のすべてをそろえることは無理ですが
2階に大きな床梁がくる通りには1階に壁がほしいところです。
30坪前後で1階に広いLDKがあると
それができない間取りがとても多いです。
できていなければ絶対だめ、地震で絶対倒壊する、というわけではないですが。
壁が偏ってしまうのもあまりよくありません。
LDKには外壁以外に壁がなく、水回りにしか壁がないとなると
構造上重要な耐力壁が偏ります。
木造在来工法は
ほどほどに強い壁が全体的に散らばっているほうが安定します。
揺れに対してねじれが起きにくいからです。
20帖くらいのLDKと水回り
という1階間取りは壁の配置が難しいのです。
どんなに素敵な空間をつくっても
物があふれて散らかったら嫌ですよね。
そうならないために
自分たちのこれからの暮らしに
どれだけの物が必要なのか
どういう物をどれくらい持つのか
想像しましょう。
もちろん、何年何十年先にどんな物を持つかなんて
決めることはできません。
でも、想定しておくことは大事です。
自分がすぐに物を買ってしまう性質なのか
捨てることが苦手な性質なのか
何を趣味にしてるか
それくらいはわかりますよね。
広い空間が欲しい
家事動線を優先したい
からといって
収納を減らすのは賢明ではないと思います。
30坪の中にあれもこれも要望をつめこむと
どこかにしわ寄せがくることも少なくありません。
玄関ホールが狭い
寝室が狭い
トイレが狭い
実際にその狭さがどのくらいなのか
どこかでできるだけ体感しましょう。
同じ広さがあればもちろん一番いいですが。
そうは簡単にありませんよね。
今の玄関に対してこの間取りだとここに壁がくる、とか
今のトイレより天井がこれくらい下がってくる、とか
6帖の部屋にベッド置くと残りの通路がこの幅になる、とか。
実際にメジャーをあてて測りましょう。
寸法を体感できるようにイメージしましょう。
家づくりするなら
5mのメジャーは必須ですよー。
持ってないなら買いましょう。
そんなこと当たり前では?
と思うかもしれませんが。
最初の頃のプランでの間取りは、そこまで考えてつくる人は少ないです。
後で考えればいい、自分の役目じゃない、と思っているからでしょう。
家具が書き込んであっても
4人家族なのに2人用のテーブルだったり
人が通る部分が狭かったり、ということも。
エアコンやスイッチの位置は打合せとしては
後半におこなうことが多いです。
ですが、その時になってから考えては遅いのです。
最初からわかっていればこの間取りにしなかったのに
今から変更するのは時間的にも労力的にも難しい
ということになります。
先に書いたように
エアコンとドアがぶつかるとか
スイッチが部屋の外になってしまうとか
そうならないように
間取りをみて日常生活を想像しましょう。
どーんと広い空間にあこがれる気持ちもわかりますが。
部屋を間仕切らずとも、
雁行させる、収納をつくるなど
大きく柱と柱の間をとばさない間取りは可能です。
柱と柱が2間を超える空間は木造在来工法は構造的に苦手です。
快適性や見た目も大事ですが、構造強度も両立させましょう。
壁のなさすぎは構造の面だけでなく
家具の配置も困ります。
適度な空間の区切りは、空間の使い分けにも有効ですよ。
間取りをつくる人の技量を見極めることです。
どこまで気を配って考えてくれるか
構造強度まで考えてくれるか
これを見極めることです。
そして、この間取りでの暮らし方をイメージさせてくれるか、です。
たんに、LDK広くしました、シューズクロークありますよ
という説明ではなく
帰ってきたらここを通って靴脱いでここでしまって・・・。
洗濯するときはここからここを通っていくのでここは広いほうが・・・。
ここに座ってこの窓からは隣がこう見えて・・・。
この部屋入るときはここでスイッチつけるからここに壁が必要で・・・。
この間取りで暮らしたら
どんな動きになって何がどうできてどう感じるのか。
そこまでイメージできるように
打合せでじっくりお話しできる担当者さんだといいですね。
暮らし方だけでなく
構造強度にも気を配ってくれる設計者を選びましょう。
間取りはパスルではありません。
要望がはまれば良し、ではありません。
建築設計は、面積が小さければ簡単
というわけではありません。
狭いからこそ、いろいろなことがひしめき合って影響するので
あらゆる面から検討する必要がでてきます。
狭いから住みにくい、広いから快適
というわけでもありません。
間取りからたくさんのことを想像して
最適な間取りを見極めてくださいね。
そんなこと、素人じゃ無理~、と思うなら。
そんな時はセカンドオピニオンという手もあります。
◎間取りがなかなか決まらない
◎この間取りが良いか悪いかわからない
◎どんな暮らしになるか想像できない
そんな時はご相談ください。
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