間取りで悩む方が気にすることが多いのが
家事動線です。
一口に家事動線といっても、その中身はさまざまな場面があります。
「家事動線をよくしたいな」と漠然と間取り図をながめているだけでは
見逃してしまいます。
住んでから「あー、こうすればよかった、気づかなかった・・・」
となってしまいます。
そこで、間取りがなかなか決まらず悩んでいるあなたに向けて
家事動線をラクにする間取りチェック項目をお伝えします。
ぜひ、間取りづくりにお役立てくださいね。
この記事を書いている私は、設計事務所や地域密着の住宅メーカーの設計職を経て、2013年に独立した一級建築士です。
今まで手掛けた住宅は300棟ほどあります。
今は地元の住宅会社さんからご依頼いただいて、建築士として打ち合わせからインテリアコーディネート、法的なこと、耐震等級や省エネ等級の計算などをしています。
みなさんに、生涯満足が続く家づくりをしてほしい、そういう想いから
セカンドオピニオンの相談を受けています。
間取りのチェックや工務店の選び方、効果的な質問方法など
あなたの価値観やペースに合わせてよりよい家づくりができるアドバイスをしています。
家事動線を具体的にみてみると・・・
■洗濯動線
■調理動線
■掃除動線
■ゴミ出し動線
これだけあります。
毎日の家事、みなさんは自分のやり方を当たり前に思っているかもしれません。
でもそれは、違う家庭からみたら当たり前じゃないんです。
あなたにとっては気にすることも、他の人は気にしないこともあります。
10人中9人がやっている家事のやり方があなたの生活スタイルに合うとは限りません。
設計士さんがあなたの家事のやり方を理解してないことも十分あり得ます。
そこまでの細かい打合せをして間取り図つくってますか?
それが、住んでからの後悔の元になります。
まずは、あなたがしている家事のやり方をあなた自身が分析して、
何がストレスで何を気にしないか、知る必要があります。
間取りをチェックする時、それぞれの項目を
「あなたがどれだけ気にするかどうか」
「間取り図で実現できているかどうか」
この両方を意識してください。
気にする度合が高いものほど、間取りでの優先順位が高いということです。
それでは、家事動線の中でも今回は洗濯動線についてみていきます。
家事のやりかたは人それぞれですが、
その中でも一番違いが大きいのが洗濯です。
朝洗濯する人もいれば夜する人もいます。
外に干す人もいれば室内に干す人、乾燥機があるから干さない人も。
2階のバルコニーに干す人もいれば、庭に干す人も。
ハンガーは物干しにかけっぱなしの人もいれば、洗濯機の側に置く人も。
各自の個室に洗濯物をしまう人もいれば、1ヶ所にする人も。
また、動線距離が長く複雑なのも洗濯です。
脱ぐ→洗う→干す→取り込む→しまう
全部が同じ場所、ということはまずないですね。
行ったり来たりすることもあります。
洗濯動線をコンパクトにする
これが家事動線全体に大きく影響します。
洗濯動線を短くするには3つの距離をチェックしましょう。
①洗濯機とキッチンの距離
②洗濯機から干す場所への距離
③干す場所からしまう場所への距離
それでは順番にみていきましょう。
朝食や弁当つくりや後片付けを洗濯を同時にやる人は多いと思います。
そういった
調理と洗濯を同時にやる人は
洗濯機とキッチンが近いほうが断然ラクです
でも洗濯機をキッチンに置くことはおすすめしません。
埃が舞うからです。
洗濯機がどこにあればいいでしょうか。
洗濯機に洗うものをいれることを考えると
脱衣場にあることが多いですね。
キッチンと脱衣室が隣で脱衣室に洗濯機があると
ベストです。
もし脱衣室とキッチンが離れていて、キッチンと洗濯機が近いほうがいいなら
キッチンの隣に洗濯室を設けて洗濯機を置いたほうが、
キッチン作業の合間に洗濯機に洗濯物をしかけたりできるのでラクです。
ただ、洗濯物を扱うところはどうしても衣類からのホコリが多いので
キッチン内に洗濯機というのはおススメしません。
洗濯機のところに行くのはボタンを押す最初と、
キッチンがひと段落したら干すために取りに行く時、
と割り切っていれば、
それほど近くなくても大丈夫でしょう。
夜洗濯する派でも、
夕食の支度しながらとか
キッチンの後かたづけしながらという人は
キッチンと洗濯機の距離は近いほうがいいですね。
タイマーかけて寝ている間に洗濯機まわす
という人は音に注意です。
寝室に近いと意外と聞こえますから。
洗濯機とキッチンは近くなくてもいい、という人もいるかと思います。
脱衣室とキッチンの関係を考えてほしいと思います。
キッチンやリビングなどから声も届かない、気配も感じないくらいに離れた脱衣室だと
子どもの様子やお年寄りの様子がわからなくなり、それはちょっと心配になりそうです。
洗濯用洗剤をどこに収納すると便利か
ということも考えましょう。
毎日使う洗剤、時々使う洗剤、詰め替え用のストック
それぞれあると思います。
見えるところに出しっぱなしの物はよく使うものだけがいいですね。
時々使う物が出しっぱなしなのはホコリもたまりますし
あまりおススメしません。
脱衣室の洗濯機まわりは
ホコリと湿気が多いので
マメに掃除をしやすい収納にすることも大事です。
洗濯物の量が少なければ洗濯機から干す場所への距離は
それほど重要じゃないかもしれません。
でも、朝の身支度と子供の世話と他の家事を同時にする中での
洗濯物を干しに行くというのであれば
洗濯機から干す場所への距離は近いほうが断然ラクです!
だけど、洗濯機は1階、干すのは2階バルコニー、というお家が圧倒的に多いんですよね。
階段上がるの面倒じゃないのかな、って思うんですけど。
庭がほとんどない、道路からすぐ見える、っていうお家も多いので仕方ないですが。
もし、バルコニーに干すのが当たり前だと思っていた、というなら
1階に干すということも考えてみてください。
2階バルコニーに干す場合は、
夫婦の寝室から出るか、子供室から出るか、廊下から出るか、
に分かれます。
子供室からだけ、の場合は子供に嫌がられる可能性は大ですが、
あえてそうして子供室に入る理由をつくっておく、とおっしゃる方もいます。
廊下からバルコニーに出たい、という場合は
陽当たりのいい場所に廊下をつくることになり
寝室や子供室が陽当たりのよくないほうになる可能性は高いですね。
寝室は寝るだけだから陽当たりは気にしない、という方は洗濯動線優先でいいと思います。
庭に干すにしろ、室内に干すにしろ、2階に干すにしろ
洗濯機から干す場所へのルートが長さというより
曲がり角が少ないほうがいい
と私は思います。
近そうに見えて
廊下の曲がりが2ヶ所あるとか
キッチン通ってからソファをぐるっと回り込まなきゃいけないとか
こういう移動はうっとうしく感じます。
どの動線もそうですが
距離というより
回り込みを減らすとか
かがむことを減らすとか
届きにくいところを減らすとか
体の動きをスムーズにする
ということが家事をラクにするコツです。
室内干し派の中では、洗濯機のある場所と干す場所を一緒にした
ランドリールームも人気ですね。
この場合は、家の中で乾く場所に配置しないと意味がない
と思います。
脱衣室はどうしても家のなかでも陽当たりの悪い位置になりがちです。
陽当たりのいい場所はリビングやダイニングになりますから。
北に面したランドリールームで干して、乾くでしょうか?
たまに部屋干しする、外に干す前の仮置き、くらいならいいですが。
ほぼ毎日部屋干しというなら
部屋干し位置はリビングの次くらいに陽当たりを考慮しましょう。
中途半端な位置は、臭いや生乾きが気になることになります。
干す時に使うハンガーや洗濯ばさみはどこにあると便利か考えましょう。
物干し竿にかけっぱなし?
物干し近くにカゴを置いておく?
洗濯室で借り干しする人は干す場所と洗濯室と両方要りますね
ハンガーは意外とかさばりますから、最初から収納場所は決めておきましょう。
しまう場所=クローゼットです。
ですが、下着やパジャマはクローゼットまで取りに行くのがメンドクサイ
という人も多いのではないでしょうか。
そういう方が家族にいる場合は、脱衣室内か近くに収納をつくることが必須ですね。
ただ、下着類は脱衣室、それ以外は各個室のクローゼット、
とわけるのも面倒、という人もいます。
そうなると、すべて1ヶ所のファミリークローゼットがいい
って思う方も少なくありません。
仕分けてあちこちの部屋に持っていくのが嫌!
という人はファミリークローゼットがおススメです。
ファミリークローゼットは
夫婦の寝室と子供部屋に隣あわせの位置にすることが必須です。
各個室からクローゼットが離れると
洗濯動線は良くても着替える時が面倒になり
個室に洋服があふれることになります。
ちなみに私は、自分の物が人のものと一緒になってることがとても嫌なので
ファミリークローゼットは居心地悪く感じる人です。
さて、ここで考えて欲しいことがあります。
ファミリークローゼットがいい、というお施主さんは今までも何人もいらっしゃって設計してきましたが、
前提としてお母さんが全ての洗濯物をかたづけるって思ってるんですよね。
「取り込んだ洗濯物を仕分けて子供部屋まで持っていく」
これって当たり前ですか?
全てを一人の人がやる前提でつくるか
それぞれがやりやすいようにつくるか。
そこから考えたほうがいいと思います。
洗濯動線に限らず
家事動線について考える時
家事をどう分担するか
家族みんながどうやって家の事に関わるか
ということを考えてほしいと思います。
単に効率を良くすることが必ずしも良いことだとは思いません。
いかがですか?
いろいろなチェック項目がありますが
全てが叶うとは限りません。
あなたにとって
「ものすごく気になること」「それほどでもないこと」
これを意識してチェックしてくださいね。
優先順位の高いことを確実に実現する、これが満足度の高い家づくりでは重要です。
家事をラクにする間取りのコツは
苦手なことはできるだけストレスを無くす、
好きなことはよりテンション上げる、
この2つを優先することです。
洗濯動線以外については次回以降に書きますね。
◎間取りがなかなか決まらない
◎工務店候補はいくつかあるけど決め手に困ってる
そういうあなたに向けて第三者の立場で相談を受け付けています。
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